この春まで、団体に属してこの活動をやっていた。
あることがきっかけで、団体でこの活動をすることをやめたけれど、
以前の現場でよく思っていたことがある。
もちろん今も思っているけれど……
それは、「さりげなく」ということ。
団体の依頼は、大きな講演会だったりパネルディスカッションだったり、
人が大勢集まるところが多かった。
2時間も前から集まって、機材をセッティングして、会の進行を確認して。
そして、いつでも私たち情報保障者は、目立つ位置にいたように思う。
始まる前、休憩時間、そして終わった後、会場にいた人から
珍しいというように見られたり、「すごい」と言われたりということも何度もあった。
正直私は恥ずかしかった。
それは、「照れ」で恥ずかしいのではなくて、
わざわざ注目されるべきことじゃないのに取り上げられることが恥ずかしかった。
注目されたりすごいと言われたりしたくない。
ただただ、その場にいた利用者が「その場に参加した」という気持ちを持って帰って
くれたらそれでいい。
すごいことなんてしてないよ。
「黒子に徹する」と、この活動の最初で言われたけれど、
そう言った人は、いつでも目立っている。
パソコン要約筆記をPRすることに一生懸命。
「こういう活動があるんです」
「こういう活動をやっています」
「聞こえない人の役に立つ活動です」
何か違う……
それが団体で活動することをやめた理由の一つ。
現場に行って、パッとパソコンを出してセッティングして、
聞こえてきた音を文字にする。
終わったらパッと片づけて帰る。
私たちの存在なんて見えなくたっていい。
できれば見えないほうがいい。
利用者に私たちの姿が見えなくていい。
文字だけきちんと伝われば……
さりげなく、さりげなく、この活動ができたらいいな……
そう思わないで済む日が来るのかな。